ミシュランガイドについて調べてみた

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2020年12月8日にミシュランガイド東京2021の発表がありましたね!
相も変わらず、東京は星の獲得数は凄まじいですね…。さすが世界一の獲得数を誇る都市。

とはいうものの、みなさんのなかには「ミシュランガイド」って言葉を聞いたことはあるけど、そこまで詳しくは知らなかったりしませんか?

「美味しいお店が選ばれている本でしょ?」
いや、たしかにそうなんですけど…(笑)

ミシュランガイドは長い歴史を持ち、格式があるもので選ばれることは一ツ星だとしても、とても難しいのです。

そこで今回はミシュランガイドについて調べてみましたので、これをきっかけにみなさんもミシュランについていろいろ知ってみましょう!


今更ながらミシュランガイドとは?
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ミシュランガイドとは、フランスのタイヤメーカーである「ミシュラン」が発行しているガイドブックのことです。

ガイドブックの中身としては、全国のレストランとホテルを厳選し、格付けしたものが記載されています。
元々はフランスのレストランとホテルだけでしたが、時が経つにつれて欧米各国、アジア版まで刊行されるようになりました。

厳選と格付けの方法は、ミシュランからの覆面調査員が対象のお店に直接出向いて、そのお店の料理を食べて、サービスを受けて評価をつけていきます。
覆面調査員はいつ来るかはわかりませんし、どんな人なのかもわかりませんが、キムタクのドラマ「グランメゾン東京」にもあったように、ミシュランの調査員はお店に来るなり特徴的な言動をするようで、ある程度は見分けがつくようです。(本当かどうかはわかりませんが…)

そしてミシュランの調査は1回だけというわけではなく、1回目の覆面調査員の評価が高い店舗は、さらに精査をすべく2回、3回と新しい覆面調査員を派遣します。
これに関しては、星の数が多いもの(二ツ星、三ツ星)になればなるほど調査回数は増えていくようです(あくまで噂ですが)。

こうして厳正な審査をして、

☆★★(一ツ星):その分野、業態で特に美味しい料理
☆☆★(二ツ星):極めて美味しく、遠回りしてでも行く価値のある料理
☆☆☆(三ツ星):それを味わうために旅行をする価値がある卓越した料理

という、基準でお店の評価を「星」で格付けしていきます。

忖度ないミシュランの信用度は抜群で、載っているどのお店に行っても「間違いない」のです。
だからこそ、このミシュランガイドはフーディーの中では持ってて当たり前の著書として長年愛されているのです。

そして、「いつか星を獲るぞ!」「星付きのお店で働きたい」と思っている方も少なくはありません。
それほどミシュランガイドに載ることは料理人・飲食店で働いている人たちからすれば非常に難しく名誉なことなのです。


ミシュランガイドの歴史

先ほどはミシュランガイドの概要的部分をお話ししましたが、ここではさらに掘り下げてミシュランガイドはどうやってできたか、そして日本版はいつごろ発行されて星の獲得数が世界一の国になったのかをお話しします。

創刊秘話-もともとは街のガイドブック、ドライバーズマニュアルだった!?
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そもそも、みなさんは疑問に思いませんか?

「なんでタイヤメーカーが美味しいお店を格付けしている本を発行してるのか」と。
実はこれには、深いお話があるのです。

ミシュラン社の創業は1889年。日本ではまだ明治22年、大日本帝国憲法が公布された年です(日本史みたいですね)。
そして創業者のアンドレ(兄)とエドゥアール(弟)のミシュラン兄弟は創業から2年後1891年に15分という短時間で着脱ができる自転車用の空気入りタイヤを開発します。

ミシュラン兄弟が開発したこのタイヤは素晴らしいもので、当時あったヨーロッパの自転車レースでミシュランタイヤを使ったものが2位と8時間もの差をつけて優勝したのです。
4年後には世界初、自転車よりも難易度の高い自動車用の空気入りタイヤの装着に成功して、パリ〜ボルド間(1200km )の自動車レースを完走したことで、「ミシュラン」のすごさを世に知らしめたのです。

…このまま話すと、ミシュラン社の歴史になってしまうのでミシュランガイドに寄せていきましょう。(笑)

ミシュランのタイヤのすごさは認知されるようになりましたが、当時の自動車は今のようなものとは違い、パンクや故障は日常茶飯事で非常に壊れやすいものとなっていました。
また、フランスで走っていた自動車の数は2,500台程度といわれていて、アフターケアの資金もある富裕層の所有が多かったのです。

さらに富裕層は自動車を、壊れやすいから遠くに出かけるために使うのではなく、周囲に見せびらかすものとして使っていました。

「これでは自動車が使われないからタイヤが売れない…なんとかしなくては」と、ミシュラン兄弟は何か策はないかと考えて、「自動車は安全で、快適な乗り物なのでビジネスでも旅行でも使って欲しい!」というところへ着地します。

そこで1900年、ちょうどパリ万博が開かれた年でした。
市街地図だけではなく休憩のためのガソリンスタンドやホテルの場所、車の修理方法や修理工場の場所などを記載した、まさにドライバーのための街のガイドブックが作られました。

そう、これこそが「ミシュランガイド」誕生の瞬間でした。

認知度もあって性能がいいタイヤなのに、それが売れないのなら売れる環境を作ればいいじゃないかという発想で、「遠出をするために車を使う→タイヤがすり減っていく→交換のためにタイヤを買う」という方程式ができてミシュランガイドが生まれたとなれば、ミシュラン兄弟は天才的商売センスですね…。

しかも、創刊当時のミシュランガイドは、なんと無料!
ディエゴスティーニもびっくりです。(笑)
無料にすることで自動車の利用のハードルを下げて、一般の人にも自動車の購入意欲を持ってもらおうという狙いがあったのかと思います。

ちなみに無料で配布されていたミシュランガイド創刊号ですが、もちろん今では絶版で歴史的資料レベルのものとなっています。
しかしちょうど100周年を迎えた2000年版の付録に創刊号の復刻版を付けており、当時そのままの内容として話題になりましたが、これもプレミアがついているんだとか…。

 

ミシュランマン誕生-しかし当時の名前は「ミシュランマン」ではなかった!?
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あわせて、今ではミシュランガイドの定番マスコットキャラクターである「ミシュランマン」ですが、誕生時期はちょうど自動車用のタイヤが開発された1894年〜1898年ごろでした。

1894年にリヨンで開かれた博覧会でブースを出店することになったミシュランは、ブース入り口に代名詞であるタイヤを山のように積みます。
その光景をミシュラン兄弟の弟であるエドゥアール氏は兄のアンドレに、ふと言うのです。

「コレ、腕つけたら人間みたいになりそうだね〜(笑)」と。

この弟のひと言に、兄はピンと閃きます。

その後、アンドレ氏は広告デザイナーのオ・ギャロ氏と会います。
そして、彼はオ・ギャロ氏がビール会社のために描いたボツデザインに目を引きます。

そのデザインは、グラスを持った太っちょの男が「Nunc est bibendu(ヌンク・エスト・ビバンダム)」と言っているものでした。
「Nunc est bibendu(ヌンク・エスト・ビバンダム)」というのはラテン語で、日本語で訳すと「今こそ飲むべし」、林先生風にいうと「飲むなら、今でしょ!」という意味になります。

ここで、またまた兄はピンと閃きます。
このデザイン、グラスの中に釘やらガラス入れて、なんでもへっちゃらに飲み込んじゃうすごい空気タイヤだぞっていうアピールができるじゃないか!と。

こうして、弟のひと言とデザイナーのボツ案を元に1898年の4月、ミシュランマンが誕生するのです。

…とはいうものの、今ではみなさんミシュランマン、ミシュランマン言ってますが、当初は前述のラテン語から取られた「Bibendum (ビバンダム)」という名前でした。
なので、昔からのミシュランユーザーはミシュランマンを見かけると「Bibendum (ビバンダム)だ!」「Bib(ビブ※愛称)だ!」と言うんだとか。

 

販売開始-今のミシュランガイドの礎はこの時期!


無料配布を始めてから自動車で遠出をする人たちも増えて、車の売れ行きも徐々に上がり、それに相まってタイヤも買われるようになって、ミシュラン社のガイドブック作戦は大成功!のはずでしたが、ある日のことミシュラン兄弟は、とある自動車修理工場で悲しい光景を目にします。

それは、傾いている作業台に数冊のミシュランガイドを噛ませて足代わりにしているものでした。
これには、さすがの兄弟も落ち込みに落ち込みます。

ここで「人はお金を払って買ったものしか大切にしないんだな…」と学び、創刊から20年経った1920年に、ミシュランガイドは販売を始めたのです。
そして、有料版になったのでもう少しコンテンツの内容を充実していくようになっていきます。

そこで、1923年版のミシュランガイドには「快適さと値段が適正なレストランには黒い星(★)をつける」という要素ができました。
これが、ミシュランガイドに「星」というものが初登場した時でした。

しかし、この時の星はあくまで「レストラン」の評価であり、今のような指標ではありませんでした。
その後、徐々にフーディたちからも信頼を獲得してきた1926年に今と同じ「料理の美味しさ」を表すものへと変わり、ミシュランガイドが浸透してきた1931年に、フランスの地方版で初め「二ツ星」「三ツ星」といった格付けがされるようになったのです。

格付けが始まったということで、このころからミシュランの覆面調査員が一般客に混じってお店に訪れるようになりました。
ただ、覆面ということで多少ミステリアスな印象を受けてしまいますよね?

しかし、お店側の心構えとしては「ミシュランの調査員が来るから気合い入れるぞ!」というものではなく、「たとえミシュランの調査員が来ても来なくても我々はいつも通り気合入れて、どんなお客様にもちゃんとしたサービスをしよう」という、心構えで望んでいる姿を見てもらうことが本来の目的なのです。

つまり、ミシュランの覆面調査員は一般のお客様として来ることによって、普段の、本来のお店を調査することができるので、読者の方々に正確な情報を提供しているのです。

 

東京版発行-今では星を世界一獲得する都市へ!
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今ではミシュランガイドは世界の都市部ごとに存在していますが、元々は本国フランスを中心としたヨーロッパでしか作られてなく、東京をはじめアメリカ版が出されたのは発行から100年以上経った2000年代なのです。

まず、フランス国外で初めてミシュランガイドが発行された国はどこかというと、隣の国であるベルギーで、いつかというと意外にも早い1904年(創刊から4年後)でした。
しかし前述の通り、この時代のミシュランガイドはドライバーのための街ガイドブックだったためグルメ要素は皆無に近いものでした。

そして、星による格付けがされている国外版が出たのはなんと、約50年後1956年の「北イタリア版」。
遅かった理由には、第二次世界大戦の影響により1940年から出版を中止せざる得なかったことが挙げられます。

しかしながら2000年代に入り、2004年にミシュランガイドの総責任者が6代目に変わってからは、ミシュランガイドをもっと拡大していこうという考えに変わっていきます。

そして2005年、ついにヨーロッパではなくアメリカのニューヨーク版が出版されるのです。
出版当時、三ツ星レストランがたったの4軒だけでシェフが全員フランス人ということで忖度だらけじゃないか!と話題になりましたが、ニューヨーク版だけではなく続け様にラスベガス版やロサンゼルス版、サンフランシスコ版なども刊行されていきました。

そして、2007年11月。ついにこの時が来ます…!
欧米以外で初めてアジア版のミシュランガイドを刊行するにあたり、最初に選ばれた場所はなんと、日本の首都、東京だったのです。

その後、京都・大阪版に加えて、関西版で神戸・奈良、関東版として横浜・湘南を追加したものが発行されました。
そして今では世界で一番星の獲得数が多い国として、日本は「美食の国」という認知を受けるようになったのです。


新しく導入された指標「グリーンスター」とは?
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今回、2021年版のミシュランガイドでは新たな試みがありました。

それは「グリーンスター」という、新しい星の指標です。
グリーンスターに獲得した店舗は6店舗で、うちわけとして三ツ星の飲食店だけではなく二ツ星・一ツ星のお店も2店舗ずつ選ばれました。

このグリーンスターですが、星とはいうもののマークはクローバーのエンブレムとなっています。
そして、グリーンスターとは「上質な料理だけではなく、サステナビリティを積極的に推進している飲食店」を対象として、選ばれるようです。

…え、ちょっと待って。聞き慣れてないのは、私だけ?
「サステナビリティ」ってなんですか?(笑)

というわけでそれについて調べてみました。

「サスティナビリティ(Sustainability)」とは、環境・社会・経済の持続、簡単に説明すると未来に向けてこれらの機能を無くさないでいきましょう!という考えです。

つまり、ここでグリーンスターの評価基準としては

・フードロス削減のために調理法を考えて料理をつくっているか、もしくはそのために食材の仕入れをしているか

・輸送コスト削減のために地産地消をしているか

・環境問題を考えて、プラスチック製品の使用を極力控える

などなど、飲食店を評価する際に上記の基準も加えられたのです。

実際に日本の環境問題の話題は事欠きません。
世界でも日本のフードロス問題は指摘されていて、農林水産省の調査ではロスの量は世界で6位、アジア圏内ではぶっちぎりの1位という事実があります。

こうした新しい指標を設けることで、多くの飲食店がサスティナビリティを意識して推進していければ、日本の未来が暗くなることはないはずです。

ミシュランガイドは飲食店の評価だけではなく、こうして、時代に合わせたこともしているんですね…!


まとめ

いかがでしたか?

今回はミシュランガイドについてお話しさせていただきました。
これで、歴史あるミシュランについてだいぶわかっていただけたかと思います…!

今ではお馴染みの格付けグルメ本ですが元々はドライバーのためのガイドブックでしたし、グリーンスターの件といい、昨今の環境のことを考慮しているからこそ新しい試みを始めていることから、ミシュランガイドは時代が進むにつれてどんどん変化をしているんだなと思えました。

また、日本は星の獲得数も世界一で「美食の国」だなんて囃し立てられていますが、今後日本の飲食店は目の前の利益だけではなく、未来の環境問題について考えて行動しなくてはいけないのかもしれないですね。

これを機にみなさんも是非ミシュランガイドのお店に行ってみたり、食について興味を持っていただけると嬉しいです!



この記事を書いた人
クックくん顔
クックくん

食べるのも料理するのも大好きなアラサーフリーター。
休日は美味しいものを求めてプチ旅にでます。
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