2021年4月。
コロナウイルス感染症の影響で、東京では3度目の緊急事態宣言が発令されようとしています。
日本経済を動かすために立ち上げられた事業Go To トラベルも今では停止になっているので、遠方へ行くための一つの交通手段、新幹線にも乗る機会が減ってしまいました。
それもあって、新幹線でシンカンセンスゴイカタイアイスを食べる機会が無くなってしまったのが残念な限りです。
…
……
……ん?ちょっと待ってください?
まさか、「シンカンセンスゴイカタイアイス」をご存知ない方がいらっしゃいますか!?
シンカンセンスゴイカタイアイス。呪文みたいですけど、アイスです。
(ダイヤモンドの次に固い)サファイア並みに固いといわれているあずきバーと変わらないくらいにすごい固いアイスです。
それでは今回は新幹線乗客の方々から長年愛されて、知っている人は知っているアイス、「シンカンセンスゴイカタイアイス」についてお話しいたします。

まずは、「シンカンセンスゴイカタイアイス」とはどんなアイスかをお話しいたします。
ちなみにこの呪文みたいな名前ですが、あくまでニックネームです。
正式名称は「スーパープレミアムアイスクリーム」といいます。
※とはいっても、この記事では「シンカンセンスゴイカタイアイス」で通します。(笑)
このアイスを製造しているのは愛知県名古屋市に本社を構え、スジャータめいらくのグループ会社である名古屋製酪株式会社になります。
元々スジャータは、コーヒーフレッシュの販売シェア第一位の会社で、東海道新幹線の車内で売っているコーヒーに添えるコーヒーフレッシュも卸していました。
こういった縁もあり、日本を代表する新幹線のステータスに見合うような、美味しいアイスというコンセプトのもと、スジャータは新幹線で販売するアイスクリームの開発に携わることになりました。
そして、出来上がったシンカンセンスゴイカタイアイスは、とにかく品質にこだわって作られているので味も美味しく、すぐに人気商品となりました。

これらの話を聞くと美味しいから人気と思われるかもしれませんが、もうひとつ強烈な特徴があります。
それこそ、ニックネーム通り「すごい固い」ことなのです。
その固さは他のアイスと比べられないくらいもので、スプーンで叩くとカンカン!と音がするほどです。尋常じゃない固さです。
買ってすぐに食べようとすると、スプーンは全然通らない、スーパーとかでもらえる薄いプラスチック製や木製のスプーンならすぐ折れます。(笑)
あまりの固さに、買ったアイスをもらう際に「しばらく経ってからお召し上がりください」と販売員に言われるんだとか…。
そして、美味しいながらもこういう理由からネットでも話題になり、小説「ニンジャスレイヤー」に登場する「マルノウチスゴイタカイビル」をもじってスーパープレミアムアイスクリームは「シンカンセンスゴイカタイアイス」というあだ名がついたのです。
今ではこのアイスは東海道・山陽新幹線、東北新幹線、北陸新幹線の車内販売、また東京駅や名古屋駅の売店に売られています。
車内で食べるだけでなく、わざわざ保冷バックを持ってきてまとめ買いをするお客様もいるくらい、今でもシンカンセンスゴイカタイアイスは大人気なのです。
また、2021年にはネットでも買えるようになり、販売当日には注文が殺到してすぐ売り切れになってしまい、販売を中止しないといけないくらいの盛況っぷりだったんだとか。
こうしてとんでもなく固い、シンカンセンスゴイカタイアイスは知る人ぞ知る、熱烈なファンも多いアイスなのです。

ここでは、シンカンセンスゴイカタイアイスの最大の特徴である「固さ」の秘密を紐解いてみましょう。
順を追って説明いたします。

シンカンセンスゴイカタイアイスは前述の通り品質にこだわっています。
そのため、シンカンセンスゴイカタイアイスは「アイスクリーム」に分類されます。
…何を言っているんだ?と思った方もいるかと思いますので、説明します。(笑)
日本でのアイスには「氷菓」「ラクトアイス」「アイスミルク」「アイスクリーム」と4種類に区分されています。
この分け方には「乳固形分・乳脂肪分の割合」が関係してきます。
「氷菓」はガリガリ君やサクレなど、乳固形分が3%以下のものを指します。
どちらかというと、名前の通り乳製品ではないアイスというイメージですね。
「ラクトアイス」は乳固形分が3%以上のものを指します。
代表例でいうとスーパーカップやクーリッシュなど、比較的さっぱりとした安価なアイスというイメージですね。
「アイスミルク」は乳固形分が10%以上、そのうち乳脂肪分が3%以上のものを指します。
代表例でいうと雪見だいふくや白くまなど、しっかりとした味はあるけど「濃厚」とまではいかないイメージです。
そして、「アイスクリーム」は乳固形分が15%以上、そのうち乳脂肪分が8%以上のものを指します。
ほかのアイスに比べて乳固形分・乳脂肪分の割合が高いため、とても濃厚でコクがあってまろやかな味わいがあります。
他の代表例でいうとシンカンセンスゴイカタイアイスもそうですが、ハーゲンダッツやレディーボーデンといった高級アイスが多いですね。
しかし、これだけ聞いてもシンカンセンスゴイカタイアイスがなぜ固いかについての答えにはなりません。

ポイントは、アイスクリームに含まれる「空気の量」にあります。
一般的なアイスクリームでは、1リットルのアイス液に対して、60%以上の空気を混ぜて仕上げていくのでかなりの量の空気が含まれていることがわかります。
実際に空気が入ることによって、やわらかくてふんわりとしたアイスクリームがつくれるのですが、それによりアイスクリームの密度が低いので濃厚さが足りなくなってしまうそうです。
そのため、高級アイスクリームで有名なハーゲンダッツは舌触りと濃厚さのバランスを大切にして空気の含有率を20%〜30%に抑えているんだとか。
たしかに、ハーゲンダッツは食べる前にほんの少しだけ時間を置きますよね?
この理由は空気の含有量が少ないから時間をおいて溶かして柔らかくするものだったと考えれば合点がいきます。
そして、ハーゲンダッツでも空気の含有率を20%〜30%に抑えている中で、さらに固い仕様になっているシンカンセンスゴイカタイアイスは、空気の量をさらに抑えていることがわかりますね。
こうして一般的なアイスクリームとは違う、高級感があってかなり濃厚なものになりますが空気の含有率がとてつもなく低いので固くなったのです。

前述でもお話ししましたが、シンカンセンスゴイカタイアイスは名前の通り新幹線で売られています。
溶けないようにするための保管方法として、みなさんが真っ先に思い浮かぶのは、冷凍庫かと思います。
しかし、実は新幹線には冷凍庫がないのです。
てっきり、新幹線内に設置されている車内販売用の基地にあるものかと思っていました…。
そのためシンカンセンスゴイカタイアイスは冷凍庫ではなく、ドライアイスがたくさん詰め込まれたクーラーボックスの中に入れられて保管し、売られています。
…しかし、冷凍庫とドライアイスでなにが違うのでしょうか。
その違いは「温度」にあります。
冷凍庫の温度はだいたい−19℃ですが、ドライアイスの温度は−79℃となります!
ドライアイスの方が圧倒的に冷たいですね。
実際にシンカンセンスゴイカタイアイスを家の冷凍庫で保管すると、もともと空気の含有率が低いので固いは固いのですが、新幹線で食べる時のカッチカチの固さにはならないようです。
このことから、いかにドライアイスの影響が強いかがわかりますね。
では、とにかく固すぎるシンカンセンスゴイカタイアイスをどう食べていくか。
この固さがアイデンティティでもありますが、やはりこの硬さを攻略したい気持ちがあります。(笑)
ここではシンカンセンスゴイカタイアイスを実際に食べたことがある、よく食べている方達から聞いた攻略法を馬鹿真面目に語っていきます…!

まずは一番オーソドックスな方法ですね。
窓際にシンカンセンスゴイカタイアイスを置いている光景、筆者はよく見かけます。(笑)
しかしながら、この方法は窓際の席しか使えない方法かつ、天気に左右されやすいのがネックです。
そして溶かすのに、ある程度時間がかかってしまうので乗車時間に左右される可能性もありますね。

聞いた人たちの大半に「まじでおすすめ!」といわれていたのが、これ。
シンカンセンスゴイカタイアイスと合わせてホットコーヒーを注文して、コーヒーの熱で溶かす方法です。
ホットコーヒーの温度は60℃ほどなので、ふたの上に置いておけばコーヒーの蒸気で早くやわらかくすることができます。
さらに、アイスとコーヒーは味の相性も良く、アイスの表面にコーヒーをかけてアフォガードの要領で食べたり、コーヒーの中にアイスを入れてウインナーコーヒーにして食べる方も多いそうです。
卑怯と言われればそれまでですが(笑)、アイスクリームスプーンを持っていれば全て解決します。
アイスクリームスプーンとは、名前の通りアイスを食べるときに使われる専用のスプーンです。
素材は熱伝導率の高い、アルミニウムを使った合金製になります。
熱には、熱い方から冷たい方へ移動するという性質があります。
この性質を利用して、温かい手の熱→アイスクリームスプーン→アイスクリームへと移動していきます。
さらに熱伝導率の高いアルミニウムなので、一般的な金属のスプーンより熱が伝わるのです。

実際にこのアイスクリームスプーンは普通に市販されているものもありますが、なんとJR東海はシンカンセンスゴイカタイアイスのために「N700Sアルミアイススプーン」というグッズを作っています。
このスプーンは2020年12月26日に発売されたのですが、一時期は大人気で品切れにもなったんだとか。
公式がネタにして専用スプーンを作るのも驚きですが、それに反応して買ってしまうファンにもびっくりです。(笑)
いかがでしたか?
シンカンセンスゴイカタイアイスはとてつもなく固くて、食べづらいアイスですが、その中にも品質にこだわっていて味が美味しい、そしてこうしたネガティブ要素をネタに昇華しているからこそ長年愛されているんだなと思えます。
新幹線乗る機会があったら、ぜひシンカンセンスゴイカタイアイスを食べてみてくださいね!
話は通じるかと思いますが、くれぐれも販売員さんには「シンカンセンスゴイカタイアイスください」とは言わずに、「スーパープレミアムアイスクリームください」と言うようにしましょうね?(笑)