黒字経営ノウハウを色々聞いてみた

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飲食店は全国に約70万のお店があるといわれています。

しかしながら、若干の増減はあるものの近年の飲食店の数はこの数字から変わることはありません。

これは、新規店舗のオープンが止まっているわけではなく、新しい飲食店が開かれている矢先に、閉店している飲食店もあるということです。

つまり、飲食店を長年続けていくことは並大抵の努力ではないのです。

そこで今回は、20年以上黒字経営を続けている飲食店のオーナーS氏(※名前は伏せさせていただきます)に話を伺い、そこで聞いた経営ノウハウについてお話していきたいと思います。



飲食店経営において大事なこと

まず、飲食店を経営するに至って大事なこととは、お店を作る段階とお店を開いて営業をはじめた段階で分かれるそうです。

お店を作る段階というのは、どういった業態のお店にするか?
どこにお店を出すのか?という自身が経営する飲食店の概要を決めることであり、ここに関しては大きく変えることはできないので、しっかりとした準備が必要といえるでしょう。

お店を開いて営業をはじめた段階というのは、営業を続けていくうちに出てくる課題をどうトラブルシューティングしていくかのことであり、これは常に出てくるものなので都度都度に対策・改善を図る必要があるのです。

それでは、飲食店の経営について二つの大事なことについて、お話ししてまいります。





お店を出す前の準備!

まずは、自身が経営する飲食店のコンセプト作りからです。
S氏が話していた、お店を作る上で大切なことは下記の通りです。
・業態
・場所
・競合店

この3つをしっかり考えて飲食店をオープンすれば、良いスタートダッシュを切れるそうです。
それでは、順を追って説明します。


業態は自身の経験を活かせるもので!

順番としては場所と前後する可能性がありますが、飲食経験者であれば最初はどんな業態にするかを考えるのではないでしょうか?

例えば、ラーメンを長年修行されてきた方が、経験のないフレンチ業態のお店を開くことはあまりないでしょう。稀なケースもありますが…。

つまり、ラーメンの経験をしてきた方ならラーメン屋を、ソムリエでワインの勉強をしてきた方ならワインを多く揃えた飲食店、というように今までの経験を活かせる業態のお店を作る方が良いお店づくりができるでしょう。


「駅前・人口が多い・大通りに面した」場所は一概に立地がいいとはいえない!
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飲食店を経営する上で非常に大切な場所決め。
この場所決めで今後、繁盛店になるかどうかが大方決まると言っても過言ではありません。

その中で「駅前・人口が多い・大通りに面した」場所で探す方が多いのですが、これはあくまで条件のひとつに過ぎないのです。

例えば、近隣に大学が多く建っている水道橋駅。
都会で学生も多く、水道橋は東京ドームもあるため、スポーツ観戦・ライブ鑑賞をしているお客様もいますので、
まさに「駅前・人口が多い・大通りに面した」場所になりますよね?

しかしながら、自身が経営しようとしているお店の業態が客単価7,000円の和食業態や15,000円のフレンチ業態だとしたらどうでしょうか…?

味が良くても、アルバイトと奨学金などでやりくりしている学生さんは客単価の高い飲食店へは滅多に行かないでしょうし、スポーツ観戦・ライブ鑑賞のあとでテンションが上がっているお客様は落ち着いた雰囲気のお店より、ワイワイとお酒を飲みながら話せる場所を求めるのではないでしょうか?

つまり、飲食店を経営する上で立地がいい場所は「お店を出すエリアと業態の需要とのバランスがとれているところ」なのです。

この条件を満たしているものとして、続けて水道橋のお話になりますが、「餃子の王将 水道橋店」です。

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ここは客単価が高くはないものの、年間売上が2億7,000万円を超えており、数ある餃子の王将の中で東日本トップ3に入る実力店です。

店舗詳細として、客単価が1,000円〜2,000円台で、ボリュームある料理に、席数は102席と大箱。
まさに、餃子の王将水道橋店は水道橋エリアのニーズにフィットした営業形態といって良いでしょう。


まずはお店を出す場所に数取器(カウンター)をもって仁王立ち!

お店を出す場所を決めるときの応用編です。

さきほど「お店を出すエリアと業態の需要とのバランスがとれているところ」が立地のいい場所と話しましたが、実際にどう調べたらいいのかをS氏に聞いたところ 「お店を出す場所に立って、朝から夜中までカチカチ(数取器)持って店の前を人が通るたびに数えていたし、どんな人だったか見ていた」

「この地域は季節ごとの祭事はあるのか、季節ごとに通る人は変わるのか調べた」という、興味深いことが聞けたのです。

ちなみにS氏はお店を出す際に上記のこと実践していたようです。

「お店を出す場所で朝から夜中まで数取器を持って店の前を人が通るたびに数えて、どんな人だったか見ていた」ことについて、これは極めてアナログではありますが、このエリアには確実にどんなニーズがあるかをリサーチすることができます。

朝から夜中まで人数を調べることにより、どの時間が売り上げの伸びるピークタイムかわかりやすいし、どんな人だったかがわかると、客単価のイメージやどういったメニューが需要あるのか想像できると思います。

「季節ごとに祭事はあるのか、季節ごとに通る人は変わるのか調べた」ことについては、例えばお店を出す予定のエリアが花見の名所だったら、遠方のお客様が来て、売り上げが伸びる可能性があります。

他にも、大学が多く建っているエリアだとしたら、夏休みや春休みのシーズンは売り上げが下がってしまう可能性もあります。


競合店を知ってテーマが見えてくる!

お店を出す前にエリアの競合店になるであろう飲食店はしっかりとリサーチした方がいいでしょう。

それでは、競合店のなにをリサーチしていけばいいか?

まずは、実際にお店へ行ってみることからです。

S氏は1回だけでなく、ランチタイム・ディナータイムで平日と土日で通ったみたいです。

その中で、働いているスタッフ・業態・客単価・席数・お客様の層(家族連れ?主婦グループ?年齢?常連客は多いか?)について調べて、お店づくりのヒントを得ていたようでした。

働いているスタッフについて、スタッフの接客レベル・ホスピタリティが低ければ、自分のお店ではしっかりとスタッフの教育・指導をすれば「接客が良いお店だ」と差別化を図れるでしょう。

業態・客単価・席数については、業態を被せていくのも戦略のひとつではありますが、競合店が老舗の繁盛店だと分が悪いので、お客様のニーズに合う前提でここは違う業態で、違うメニューで勝負をするのがセオリーといえるでしょう。

客単価も出す業態によって変わってはきます。
しかし、繁盛している競合店の客単価は、そのエリアのニーズに合っているともいえるので、参考にすべきかと思います。

席数についても、競合店が団体のお客様が入れない規模であれば席数が多い大箱にするのも良いでしょう。
そもそも団体のお客様の需要が無さそうなら、近い席数にするのもアリです。

お客様の層を調べることも重要で、ターゲットはどこに置いているのかが分かれば、差別化のヒントが見つかるかもしれません。



飲食店の営業をはじめてからの改善策

さぁ、良い立地にお店も出せたし、ニーズ・競合店リサーチもバッチリ!
満を辞して開店だ!繁盛店目指して頑張るぞ!

と、意気込んで営業を開始。

しかし、開店してから半年。

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下調べもしていたのでお客様もちゃんと来ていただけているのに、なぜか結果的に黒字になっていない…なぜ…?
、、、といった悩ましい問題が発生することが飲食店の経営ではよく起こりうるのです。

S氏いわく、この原因に気づけない飲食店は早々に潰れてしまうので、早々に解決するための手立てをしなくてはならないが、解決方法は意外とシンプルとのこと。

こういった問題の中でS氏が注目する項目は下記の通りです。

・売上高
・原価
・人件費
・営業利益

この4つの項目のどこかに必ず原因があるので、クリアできれば必ず黒字に向かうようです。
それでは、順を追って説明してまいりましょう。


売上高

後にお話しする費用を抜きにしてシンプルに「いくら売れたか」がわかる数値です。
この売上高からいろいろな費用が引かれて、黒字か赤字かどうかがわかります。

つまり、この売上高が低いのは根本的に「お客様が来ていない」「設定している客単価が合っていない」ことが原因かもしれません。

お客様が来ていない理由は様々あるとは思いますが、立地面など変えることのできないことではなく、料理・接客の内容や質を今一度見直して改善を図る考えをまずは持ちましょう!

設定している客単価が合っていないとしたら、価格設定やメニュー構成を考え直す必要もありますし、お客様からいただく注文の数をもう少し増やす工夫を考えるのも解決の道です。


原価率

黒字を出すためにも非常に大切な項目の一つです。
原価率の計算方法として、【原価 ÷ 販売価格 = 原価率】となります。

原価率は低ければ低いほど飲食店にとって利益が増えるのですが、お客様が満足できる料理かどうかはいえないクオリティーの低いものができてしまいます。

逆に原価率が高すぎてしまうと、お客様は「え!この値段で、このボリュームでいいの!?」と、満足度は上がりますが、飲食店側からすれば利益が少なくなり、赤字の要因となります。

原価率が上がってしまう原因としては主に「仕入れ価格の上昇」「ロス率の増加」「オーバーポーション」の3つになります。

仕入れ価格の上昇については避けられない事態で外的要因が大きいです。
ロス率の増加に関しても外的要因の部分も大きく、完全になくすことは難しいですが、5%を超えると高いので、
必要のない発注と、無駄な廃棄物を減らしながら抑えましょう。


最後のオーバーポーションというのは、料理を出す際に決まった分量(ポーション)よりも多く盛り付けてしまうことです。
お客さんにとっては「量が多い!ラッキー♪」なんて思いますが、オーバーポーションが続くと原価が上がってしまいます。

さらに、オーバーポーションが発生することは分量にばらつきがあるため、お客様の満足度も下げてしまうこともあるのです。
こういったことが起きないように、事前にレシピを数値化して分量の適正値を記しておけば、解決できると思います。


人件費

スタッフ一人ひとりには給与が発生しています。
働くスタッフが多ければ、それぞれの負担が減って個人的にはありがたいことかもしれません。

しかし、働けば働くほどコストが発生する時給制のアルバイトスタッフが多い飲食店であれば、人件費は気をつけたいところですね。

そのためには、お客様が比較的少ないアイドルタイム、お客様で混み合っていて忙しいピークタイムを見極めてシフトコントロールをしましょう。

また、当日のワークスケジュール(時間帯別に仕事を振り分けたもの)をスタッフにしっかり共有・指示することが大切です。

あわせて人件費を削減するためには「スタッフのスキルアップ」も重要ですね。
「〇〇さんがいないと、この作業はできない」というのをなるべくなくしていき、全てのスタッフが仕事に関してほとんどできるようになっていけば、人件費は大きく変わっていくでしょう。


営業利益

その飲食店が本業で稼いだ利益を表しています。

計算式としては、【売上総利益(粗利益) – 販売費及び一般管理費(販管費) = 営業利益】となります。

売上総利益(粗利益)とは、
前述の「売上高」から売上原価(飲食店でのお話なら、食材原価と飲料原価、テイクアウトをしているファストフード店なら包材原価を合わせた値のこと)を引いたものなります。

つまり、計算式としては【売上高 – 売上原価 = 売上総利益(粗利益)】となります。

販売費及び一般管理費、通称「販管費」は前述の人件費も入りますが、飲食店は他の項目として、水道・光熱費、備品・消耗品費、修繕費などなど、営業する上で必要な費用のほとんどが、販管費に入ります。

ここで大事なポイントして、販管費の中にある、備品・消耗品と修繕費があります。
備品・消耗品に関してムダな使い方をしないのはもちろんですし、椅子やテーブルなどの修繕費は日々の清掃・手入れをしっかりしていれば、そうそう起こり得ないことだといいます。

これはQSC(飲食店の基本といわれるQuality-品質・Service-接客・Cleanliness-清潔さ)についてのC(Cleanliness-清潔さ)にも当てはまりますので、お客様の満足度を上げるだけではなく、お店の実質的な利益にも影響があるといえるでしょう。



まとめ

今回は、繁盛店のオーナーとして20年飲食店の営業を続けているS氏から経営ノウハウについてのお話でしたが、いかがでしたでしょうか?

ぜひ、今日のお話を参考にしていただき、繁盛する飲食店を作ってお客様に笑顔を届けて、さらに飲食シーンを盛り上げていただけたらと思います。



この記事を書いた人
クックくん顔
クックくん

食べるのも料理するのも大好きなアラサーフリーター。
休日は美味しいものを求めてプチ旅にでます。
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